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第65話 未亡人を甦らせた子犬

2011年08月26日 01:54

自宅もそうだが、山荘のご近所さんとも親しくしてもらっている。特に山荘の方は、さびしい山奥の中の同じ別荘族という特殊な共通点もあり、またそのせいか人恋しさもあって、親しくなりやすいようだ。互いに声をかけ、すぐに親しくなる。また、ご近所のペンションやホテルの経営者の皆さんとも、親しくしていただいている。ドーベルマンという目立つ犬を連れて、もう二十年近く毎年長期間滞在しているせいだろう、見慣れた私を見かけると、気さくに声をかけてくれる。そういうわけで、夜になると「シーン」と静まり返り真っ暗闇になる、鹿や狐や恐ろしい熊も出る、標高1400mの山奥の、この山荘の方が、強がりかもしれないが、自宅よりもむしろ孤独感が少ない。 ・・・ 夏休みで遊びに来ていた、にぎやかな弟一家に帰られ、寂しくてシクシクしていた私だが、昨日久しぶりに雨がやみ、親しいご近所さんの家に遊びに行き、一緒に山登りをして楽しく過ごしたら、心がかなり晴れた。


そのご近所さんとは、3年前にご主人を癌でなくされた未亡人だ。「未亡人」とはおかしな言い方だが、「後家」さんや「寡婦」さん??というのも変だし、適切な言い方が分からないのでお許しを。この方はおそらく70位と思われるが、とても若々しく、女性は強いなあ、と思わせる方だ。昨日は近くの景色の良い所へ案内した。もう40年も前からここに別荘を持つ人だが、そこへは初めてだそうで、その雄大な景色に、たいそう感激していた。そこはイシュ達との散歩コースだったので、私はもうそれほど感動はしないが、それでもやはりいい。約一年ぶりか・・・。 昨年来た時は、亡くなったばかりのチビッ子を想い、風の音を聴きながら、いつまでもいつまでもここにたたずんでいた。イシュは何故か好まなかったが、チビッ子はここが大好きだった。いつもうれしそうに、縦横無尽に駆けまわっていた。 ・・・ だが昨年は、7月から11月まで滞在していたが、2~3回来ただけだった。やはり一人でここに来るのは辛い。寂しさが身にしみる。


昨日はお蔭様で、可愛いトイプーまで連れて、ワイワイガヤガヤ楽しかった。奥さんからいろいろ質問され、「あの山は何々で、あそこは・・・」と私は喜んで解説した。なぜそんなに楽しかったのだろう? 誤解を招きかねない言い方だが、同性ではなく親しい異性と2人、というシュチュエーションのせいなのだろうが、それよりも、やはり人間は群れ動物なのだな、と私はつくづく思った。


一般的に、女性の方が男性よりも、(ビジネスライクな上下関係ではなく)人と人との人間的な横のつながりは作りやすいという。例えば女性ならお友達との旅行など珍しくないが、男性二人で旅行だなんて、相当珍しい。そういった女性のアドバンテージは、かなりのものだと私は思う。とにかく男性は気を使うし機会もない。昨日のシュチュエーションも、奥さん同士なら珍しい事ではないが、男性の私が、一人住まいのご近所さんの家に招かれ、お茶をごちそうになり、一緒にどこかへ行くなど、普通はあまり無い事だ。男性同士では、仕事や何かイベントがらみでもない限り、そういう事は滅多にない。こうして中高年男性は孤立していくわけだが、脳の老化防止の為には一日に最低4人ぐらい(家族や部下等ではなく新鮮な刺激が受けられる他人)との会話が必要だという。だから私は、マメに買い物に出かけ、店員さんを捕まえ、例え少しでも会話に努めている(店員さんごめんね)。そんな話を奥さんにすると、「私もそうなのよ」と大笑い。しかしそう言う彼女の携帯には、ひっきりなしにお友達から電話が掛かり、とりとめもない話をしている。こういうのは私達ではありえないことだ。私はうらやましくその様子を見ていた。


その奥さんも、一時はかなり落ち込んでいたという。亡くなったご主人は、イケメンのスポーツマンのお金持ちで、私もあこがれるような方だった。しゃれたベンツのSL(最高級オープンスポーツカー)を乗りこなし、私の家の前を通る時に手を振り、「今からゴルフ!」などと元気にしゃべっていた様子を思い出す。しかし数年前、「おれ肺癌だって。でも幸い早期発見だったから良かった・・・」などと言い、奥さんも「(無事手術が終わったら)皆で全快パーティーを盛大にやりましょうね!」と言っていた。しかしその後音信不通になり、私は他のご近所さん達と不安をつぶやいていた。程なく残念な知らせが伝わり、しばらく見かけなくなっていたところに昨年、久々にこの奥さんと再会した。ほっとした。明るい表情だった。足元には、小さな可愛いトイプードルが居た。悲しみにひどく落ち込んでいた奥さんを見かねた家族が、子犬を買ってきて、半ば無理やり奥さんに持たせたのだという。そして、「飼って本当に良かったわ、救われた」と、ご本人が力説した。当時愛犬を亡くしてひどく落ち込んでいた私に対して。 昨日も、そのトイプーを可愛がる私を見て、やはりそれを言っていた。私がとても寂しそうに見えたのだろう。


子犬の癒やし効果が、いかに素晴らしいか、私も経験がある(第36話参照)。しかしその子犬に、たった5年で死なれた時、その悲しみがいかに甚大か、それも私は経験した。他の方のブログを読んでいて、時にかなり深刻な状態になっている方を見かける事がある。私にはその悲しみが、痛いほどよく分かる。特に私のような孤独な独身者の方の場合、悲しみが倍加する。その後の寂しさも強烈だ。 ・・・ 私は思う。生と死について。そんなもの物質の変化に過ぎないなどと野暮は言うまい。そうじゃなく、子犬という魂との出会いと、その後深い絆で結ばれた愛犬との別れについて私は考える。世の中の出来事について、全て意味があるというのなら、僅かせいぜい十数年で終わる愛犬との暮らしにも、深い意味があるのだろう。そう考えると、たった5年で終わったチビッ子との生活も、光り輝いて見えてくる。あれほどの悲しみは、裏を返せば、それほどの深い愛の中に居た証と言える。そう、私も、嘆き悲しんでいるあなたも、実は幸せ者だったのだ。誰があのような深い愛の中で、あれほど幸せに暮らせただろうか。イシュやチビッ子(正式名チューちゃん1号、チューちゃん2号)のような名犬とめぐり会えて、私は本当に幸せ者だった。○○の奥さん、素晴らしいトイプードルに出会えて、本当に良かったですね!おめでとう・・・


その場所で、景色に見惚れている奥さんに私は告げた。「もう帰りましょう、怪しい雲が出てきています」。案の定、下山途中ポツポツと降り出す。雨宿りする場所などない。んな事より、久々に晴れて、大量の洗濯物と、4人分、いや私の分も含めて5人分の布団が干してある!!!  ああ雨よ、もう10分待ってくれ、と願うもかなわず降り出す。3人(2人と一匹)で必死に駆ける。若犬のくせに、トイプーが一番遅れる。「こりゃ!チビ、きびきび走らんかい!」と活を入れる。すると不思議と走り出す。奥さん大笑い。雨の中走る私達を見て、通り道のホテルの支配人が声をかけてくる。手を振って「布団を干してあるんです!」と言う。あらら大変という顔をされる。 ・・・ しかし何だか段々「アハハ」とハイな気分になってくる。雨の中を走ると、何か特殊な心理作用でも働くのだろうか。いよいよ本格的に降り出してきたので開き直る。「たかが布団が濡れるぐらい何だ!そんな事より、転んで下半身不随になる事を心配しろ!」と自分で自分に唱える。奥さんから「そうだそうだ、そのとおり!」と褒められる。そして、その奥さんたちとも別れ、やっと家にたどり着く。 ふとんは?  ・・・  オーマイガー!  ふ、これも人生さ。(涙)

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チビッ子が大好きだった山のお散歩コース

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うれしそうな顔

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誰も来ない場所なのでフリー

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短い森を抜けると・・・

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秘密の広場が。

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そこには雄大な景色が。写真ではその迫力が伝わらない。

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帰り道。


この曲が思い浮かんだ。チビッ子を抱きながらよく聞いた曲。
モーツアルトのクラリネット協奏曲。最高の曲。3つの楽章全て最高



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