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第62話 お散歩調教

2011年08月05日 13:11

最初にいくつかお断りするが、これはドッグショー用のものではない。あのような芸は、競技会の為のものであって、リラックスする憩いの場であるべき家にまで持ち込むのは、よろしくないと私は考える。したがって、私の愛犬に対する例は、一見ショー用と変わらないリーダーウォークに見えるが、あくまでリラックスした快適な散歩を実現する為の調教であり、考え方は根本から異なっている。そこを誤解しないで欲しい。また、犬の問題全体に言える事だが、相手は人間が考える以上に知能を持った生き物だ。方程式など存在しない。突き放した言い方になるが、この正解というのは、飼い主が努力し、よく犬を観察し、研究し、試行錯誤を繰り返しながら、犬と一緒になって作り上げていくものだ。他人の成功例など、ほんのヒントに過ぎない。むしろ他人の失敗例の方が、ずっと参考になると思う。(成功例には本人も気付いていない様々な要因が複雑に絡んでいる事が多いが、失敗例は原因が極めて具体的且つ普遍的である事が多い)


さて、まず散歩の重要性について、あらためて考えてみたい。健康な人間が強制的に家に閉じ込められ、一歩も出られずに年月を重ねていけば、いったいどうなるか。おそらく体の健康を害するはずだ。だがそれよりももっと深刻なのは、精神面の健康と知能への影響だろう。私の経験では、本来犬は、一日に4~5回は散歩したいのではないかと思う。山荘に居る時、外のデッキでくつろいでいると、生垣や塀で囲まれた自宅では寝てばかりのイシュ達が、盛んに周囲を散策したがる。山に誰も居ない時に、呼び戻しの訓練を兼ねて何度かそれを実験してみたが(注:絶対に真似しないで下さい。多くのペットが別荘で行方不明になっています)、数分ほど周囲を見回って数時間家で休憩してまた出発という感じだった。おそらく完全自由なら、イシュはそんなライフパターンだろう。しかし現実社会は、日本中どこでもアスファルトに覆われているから、夏場の昼の散歩など自殺行為。仮に飼い主が時間を自由に使えても、早朝と夕方の涼しい時しか散歩は出来ない。だから、遺伝的に散歩が苦手な犬以外は、基本的に皆散歩不足ではないか?と私は思う。犬を走らせる庭を持っている人は、もちろん有利だが、犬の散歩には、運動以外にも様々な目的がある。その辺の話は割愛するが、飼い主はこういうところを押さえたい。散歩に出た愛犬が喜び勇んでリードを引っ張るのは、そういう事情で、無理からぬ面があると思うのだ。


前置きが長くなってしまったが、ではどうやって横にぴったり付けるようにしたらいいのだろう。散歩デビューして間もないウブなチビッ子の写真を紹介しながら、簡単に説明しよう。写真のとおりチビッ子は、あっという間に覚えてくれたが、これは悪い癖が付く前だったからだ。一旦悪い癖が付いた子を矯正するのは、白紙から調教するのと比べ、難易度はかなり高いという事を予め言わなくてはならない。また、事前の準備も重要だ。いきなり散歩に出て、「さあこうしろ」、と言っても、そうそう上手くはいくまい。私がした準備は、だいたい以下のとおりだ。


① 庭での遊び等をとおした充分なコミュニケーション
② 確実に実行できる「座れ」や充分なアイコンタクトの経験
③ 充分なトイレ調教
④ パニックにならないよう事前に家で首輪とリードに慣らさせる
⑤ まずは家の中で、エサでつりながら首輪だけで「ついて」を練習
⑥ 同じく室内でリードをつけて円を描くように「ついて」の練習(左右とも)
⑦ 緊急停止の練習(リードを頭上に、胴に撒きつけハーネスに、リードのコブに体重をかける等)
⑧ 抱っこして、少しずつ外を散策(まずは家周辺から)
⑨ 少しだけ地面に置き、コンクリートやアスファルトを経験させる


等々。実際には、もっともっとたくさんの、様々な準備を行った。興奮して無駄にリードを引っ張る事態が起きないようにする為には、それぐらいの準備が必要だ。ではそれでもリードを引っ張られた場合はどうすれば良いか。答えは第54話で書いた、「・・・」、すなわち「無言」だ。散歩は、「楽しく」が絶対的な基本だ。時々、ワンコに引っ張られた為に激怒する飼い主さんを見かけるが、あれでは楽しくはなかろう。そうなると「無言」が効かなくなる。私の場合、チラチラとチビッ子とアイコンタクトをとりながら、常になんだかの楽しい声、鼻歌などを響かせ、「そうそう、そうそう、グーグー、グーグー、チューちゃんオリコウだね♪」などと言いながら散歩した。そして、例えば、ついつい褒め過ぎてしまった為に、興奮したチビッ子が、一歩前へ出た時などは、途端に無言にして空気を変え、そして方向を、急回転させた(円を描く横歩きの訓練の時は、少しずつ角度を変えて、自然に横にする。この時は、急回転して犬を後ろにすると、追いつこうとスピードを上げるので、かえって逆効果になることがある)。再びゆるいリードで横にぴったり付く状態に戻ったら、「ぐーぐー」や鼻歌等を再開した。



これでほとんど解決したが、それに加えて私がよくやって手口に、こんなものがある。基本的に動物は皆怖がりだ。人間は科学を知っているから動物のようには怖がらないが、何も知らない原始人は、動物と同じように怖がりだったろう。そのギャップを利用した。例えば車やオートバイ(それらを初めて見る子犬には怪物に見える)などが横を通れば、私は少々大袈裟に、自分が盾になってチビッ子を守った。また、人間や他の犬などに慣らす為に、私は、初対面の通りすがりの人でも誰でも、どんどん声をかけて談笑したが、しかしその時、チビッ子を私の後ろへ控えさせ、まるで敵からチビッ子を守る盾のような体勢をとって、チビッ子を安心させた。そしてその人にチビッ子を紹介する時、一緒にかがみ、手の甲だけを斜め下からそっと出すようお願いした。これも「パパ凄い♪」と思わせる効果を狙った、チビッ子の目を意識した演出のひとつだ(初めて見る大きな生き物をパパが思いどおりに動かした!制御した!パパ凄い!等と思わせる目的)。もちろん実益もある(実際ワンコの為には、特に初対面の子犬には、ぜひそうして欲しい)。


そして、近所の家に、吠え掛かってくるワンコが居ようものなら、それこそパパの威厳を示す絶好のチャンス。チビッ子を守る姿勢を前面に出し、自分が盾になって間に入り、威厳を持ってそこをゆっくり通り過ぎた。チビッ子はおそらく、「パパ凄い♪ステキ♪」と思ったに違いない。これらパパの涙ぐましい努力によって、チビッ子は、パパを尊敬する、お利口なお散歩パートナーに成長していった。ジョークに聞こえるかもしれないが、動物の調教には、この手の演出とユーモアが必要だと私は長年の経験から感じている。その成果か、チビッ子に関しては、ほとんど失敗談が無い。何かあったかな?と思い返しても、浮かんでこない。「参考になるのは自慢話~の成功例ではなく、実は失敗談」と冒頭に書いたばかりだが、ここまで読んでくださった皆様には申し訳ないが、思い当たらないのだ。 ・・・ いや、そうそう、大失敗がひとつあった。


いきなり遠くへは行かない、長距離はしない、これ当り前の基本だが、私は、チビッ子の散歩デビューが、あまりにうれしくて、ついつい思い出の、イシュの散歩コースへ行こうとしてしまい大失敗した(前話の写真参照)。あわてて引き返し、家の近くで、ぐるぐる円を描く訓練を始めた。「あんなに事前準備していたのに一体何やってるんだ俺?」と私は反省した。イシュの散歩コースを、(勝手に)イシュの生まれ変わりとしたチビッ子(第9話参照)と再び歩ける事は、一瞬私の頭を、くるくるパーにするほど、興奮させるものだった・・・。 散歩デビューで、いきなり長距離なんて、(調教の)自殺行為です。ご注意を。


いかん、思い出したら泣けてきた。こういう時はこれだね。元気が出る。ベートーベンのピアノ協奏曲第4番

クララハスキルの名演。百年前アイドルとしてモテはやされていた美少女が、今や伝説の巨匠と世界が認定。しかしさすがにベートーベンの大曲は無理だろという男の偏見を吹き飛ばす感動的な名演だ。非常に素晴らしい。


yhyj (1)
ほらほらチューちゃん、家で練習したでしょ?思い出して。「つ・い・て」

yhyj (2)
「パパこうすればいいの?」  「そうそうグー」

yhyj (4)
「ふふふチューちゃんお利口だね」  「ワタチは名犬チューチューだよパパ」

yhyj (7)
「はーいご苦労様チューちゃん最高♪」  「ふん、こんなの簡単さ。馬鹿にしないでよ」





コメント

  1. さらだ | URL | B6Sud9Cs

    こんにちは

    パパさんの話しはほんと面白い・・・
    っていうか マジ似ています.私と


    今のジュニアはパパさんが書かれている準備万端で お散歩デビューしました。
    よって全く 困らずの賢いお坊ちゃま君であり
    先代のラッキー親父は私の初めての犬でありながら
    私の犬嫌い 犬怖いを腐食させた可愛い犬だったもんで (見かけも性格も・・)
    身を張って守りました。 よってかーちゃんと居たら安心・・・!
    と思ったのか どの犬にも怒らず 唸らず 乗られても噛まれても・・・
    喧嘩うられてもの のほほん犬になってました。
     かーちゃん大すきだから 私の嫌がる事はしない 困った事もしない天才犬・・・猛爆


    それから面白い事に歌も作ったのですよ
    ラッキーちやんの歌 散歩のうた・・・散歩時はしゃべりまくりの歌いまくり。

    親子でちょっと散歩風景が違うのですよね
    私は今のジュニアに足りないものを ラッキーの子育てを思い出して
    6歳になりますが 執着心もっともっと付けたいです。  依存心ではありません。
    もっと好きなって欲しいの・・・(^^)

    あー読んでよかった。 すごく今おもってます
    はれぱれしい気持ち・・ありがとうございます。

  2. イシュのパパ | URL | -

    Re: こんにちは

    こんにちは、うれしいコメント、ありがとうございます。「そっくり」・・・そうなんですか、似てくるものなのですね。おかげ様で(育て方が)間違っていなかった~と、少し自信がわきました。それにしても、「犬嫌い」な方を、なんと世界大会に出場するほどの超ワンコマニアにするなんて、本当に素晴らしい子なんですね! 確かに写真からも、人を夢中にさせるオーラを感じます。そんな名犬が側に居るなんて、うらやましい限りです。凱旋帰国パーティー、盛り上がってましたね。皆さん若くて美人ばかりでびっくり。活気があって、とても魅力的なグループですね!機会あれば、ぜひ大会を見てみたいものです。

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