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第23話 通じる意思

2011年03月05日 02:49

私は、動物の中で最も人間に近いのは、猿を除けば、老馬だと思っている。イルカ?カラス?空を飛ぶ生き物や海の中の生き物では、いくら頭が良くても環境が違いすぎる。では犬は? 確かにドーベルマンのような、育て方によっては非常に人間ぽくなる犬種もあるが、もし彼らが人間の言葉をしゃべったら、私は腰を抜かし、ショックで卒倒するだろう。だが、老馬がしゃべったなら、「おお、こいつ、とうとう人間語をしゃべれるようになったのか」と、思ってしまうはずだ。


どうか笑わないで欲しい。長年、ビジネスではなく、純粋に馬と接してきて、心から馬を愛してきた人間として、たわ言かもしれないが実際に私は、彼らと会話が出来ていたのだ。  障害飛越(Show jumping)や馬場馬術(Dressage)の世界トップクラスの動画を、今や検索すれば簡単に観れるようになった。それらを見れば、馬が高い知能を持ち、騎乗の人間と、意思と意思とで会話し、極めて高度で複雑な作業をこなしている事が理解してもらえると思う。




体重と脳の大きさの対比を単純計算して数値化した指数がある。なるほどそれを見れば、馬とは比較にならないほど体重が軽い犬の方が、数字は若干良い。しかし、肉食獣で体が複雑な動きをする犬と、比較的単純な動きしかない馬とでは、脳の中身を単純に比較することはできない。例えば記憶力だ。馬は飛びぬけて記憶力が良い動物である事はよく知られている。「動物に考える力や感情があるかどうか、(あるのが当たり前すぎて)議論することさえ、ばかばかしい」と、動物の脳の権威テンプル・グランディン博士は断言する。その上で、動物は、映像や、においや、明かりや、音のパターンの、「記憶」で考えるという。つまり、動物が人間に近づくのに最も必要な才能は、記憶力だというのだ。



博士の言葉に私は興奮した。そう、脳がたいへん大きい動物で、素晴らしい記憶力を持ち、多くの経験を積んできた生き物、それこそが、愛情ある人間に長年大切にされてきた老馬なのだ。


騎乗していて私の調子が悪い時は、よくロンもりゅうも、こちらの方を向き、「今日はもうやめたら?」という顔をした。私が何か無茶な指示を出した時も、こちらを向いて、溜息をもらした。「やれやれ・・・」と。(こういう時、恐れを知らないおバカな若馬なら、狂ったように突進しただろう) あるいは逆に、恐れをなして尻込む私を、叱咤激励してくれることもあった。私に馬術を教えてくれたのは、ロンとりゅうだ。これは偽らざる気持ちだ。実際にそうなのだ。トップクラスの選手達も、よくそんなことを言う。


りゅうは、まさしく名馬だった。写真は、比較的大きな障害を飛ぶグレードの高い試合。私とりゅうは、普段は無理をしないリラックスした試合運びをするが、この写真を見ると、りゅうは非常に気合が入っている。おそらくジャンプオフ(優勝決定戦。満点のうえスピードで勝者を決める)だろう。経験豊富なこの馬は、ジャンプオフのとき、それをすぐに察知した。確かこの時は100分の一秒差で優勝を逃したときだ。がっくりしていた私を、りゅうが励ましてくれた事を覚えている。


りゅう爺の素晴らしさについて、まだまだ言い足りない。元妻が、その日調子が悪かったのか、かなり酷い乗り方をして危険だったのに、見たことも無い必死の形相で、りゅうがリカバーして事故無く完走、しかも上位入賞まで果たした事もあった。別の試合だが同じ頃同じ会場で彼女が若馬に乗って、悲惨な目に遭っている写真と見比べると、りゅうの偉大さがわかる。


そんな、人間への思いやりあふれる本当の名馬が、屠殺場送り寸前だったのだ。いくら馬を食べる国とはいえ、馬の命を、あまりに軽んじていないだろうか。確かに私が引き取った時のりゅうは、体調が悪かったのか、痩せてボロボロの年寄り馬に見えたが、それにしてもだ。私のもとへ来る直前は、複数のオーナーを経て某大学の馬術部が所有していたそうが、この「放出」の判断には、強い疑問を感じる。おかげで、おそらく、学生達の助命運動によって、私はこの名馬を得たわけだが。

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珍しくファイティングポーズを取る、りゅう爺

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「爺さん気合入ってるなあ」と周囲も感心。

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「おお」と、りゅう爺の迫力に驚く観客

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若馬も驚く華麗なフィニッシュ

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遠目にはしょぼくれて見えるが、実は美しい瞳のりゅう爺



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コメント

  1. ブレイドママ | URL | mQop/nM.

    こんにちは!!!

    ロンちゃんもりゅうちゃんもとても愛されてたと文章の中から伺えます。
    動物はみんな心を和ませてくらますね。
    ブレイドも良い時の走りは年寄りの走りじゃないとみんなから驚かれますv-410

    りゅうちゃんに乗ってるイシュのパパさんカッコいいv-353

  2. イシュのパパ | URL | vfJUa5co

    コメントありがとうございます。
    ワンちゃんの障害飛越も迫力ありますね。
    そのかっこ良さに驚きました。

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